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「Music of Life」
CHAPTER3「悲哀の少女・後編」

CHAPTER3「悲哀の少女・後編」29

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香奈との取っ組み合いに敗れた安恵は両手で顔を覆い泣き叫んでいた。
誠良は落ちていた香奈の携帯を拾い、液晶ディスプレイにヒビが入ってるのを観て、去りゆく香奈に誠良が呼び止める。
「おーい。これは間倉の携帯か?」
「う、うん。そう」
香奈はうつむきながら、誠良から壊れた携帯を受け取る。
「これを壊したのは、衛原と石岡か?」
「うん。ここに連れて来られた時に、一美に抜き取られて、そして安恵の手に渡って、手が滑ったと言って、地面に落として、それを安恵が踏んで、悪気がない風にごめんねと言った」
香奈は誠良の問いに唇を震わせながら答えた。
「あいつらに弁償させるか?」
「ううん。どうせ色々とごまかして言い逃れするだろうから、今だったら取りかえてくれるから、それでいい」
「そうか。ならそれでいいだろう」
香奈の答えに誠良は頷いた。

一方、音葉と里実は寛斗、隆矢、妙子のそばにやってきた。ドアが開いた後、武流と統哉に開けてもらい、二手に分かれていた。音葉は里実と供にいる。
「あのドアを壊したのは貴方達ですか?」
音葉が寛斗と隆矢に問うた。
「おお、俺らとよ」
隆矢が両手を頭に乗せて、笑顔で答える。
「なんて言う開け方をしたんですか」
音葉は二人にため息をつく。
「しょうがなか。鍵なかったし、時間がなかやもん」
寛斗は弁解するが、音葉は呆れた表情をする。隆矢が口を開く。
「なんこの姉ちゃん」
「あたしのクラスメイトばい」
「ふーん。眼鏡かけて真面目そうな奴っちゃね。気も強かやそうやし」
隆矢は腕を組む。

「ところでこいつも舞子に対して、なんかしよっとっちゃなかろうな」
寛斗は音葉を怪しい目で観る。
「私をあんな下衆供と一緒にしないでください!」
音葉はさらりとかわした。
「下衆?ケツ?」
隆矢はギャグを言ったつもりだが、妙子と音葉は呆れてしまう。
「全くそんな発想しかできないのですか?男と言うのはこれだから」
音葉はため息をつき、妙子の方に顔を向ける。
「妙子さん。安恵さんはあの通りですが、一美さんがまた何かしようとしています。お早めに羽島先生と供に舞子さんのところへ」
「わかっとうよ。・・・・おい!おまえらもうよかっちゃろうが!こげな事辞めるとよ!」
音葉の意見に答えた妙子は群がる生徒に怒声を上げる。
「妙子。さっきも言ったろうが。おまえが手を出せば、訴えってやるってな」
「だから。それが何とよ!」
一美は顔をひきつりながら言い放つが、妙子は目を鋭くして前に突き進む。生徒の一人が竹の棒を妙子に向けるが、それに怯む事なくゆっくりと足を前に進める。

安恵は泣きながら、目を違う方向に向けると、一美が落としたナイフが目に飛びこみ、安恵は泣くのを辞めた。

「音葉、これはあたしの問題やけん。あんたが出てくる事なかよ。それに里実、香奈を取り戻したっちゃけん。あんたにはもう関係なか」
妙子は手を引くように、音葉、里実の順に言った。
「もう貴方だけの問題ではありません。私達のクラスの問題です。もうここまで落ちた以上、関係なくはないです。里実さんは違うクラスの人間ですから、香奈さんを連れて、自分のクラスに帰ってください」
「音葉、関係なくないよ。あんたを放っていけないよ。カイ達もここから動いてないじゃない」
里実の言葉に音葉は誠良達に目を向ける。誠良は音葉に頷き、音葉は小さく微笑む。

「香奈あああ!ぶっ殺してやる!」
突然の怒りの叫び声に周囲はその方向へ目をやる。安恵が落ちていたナイフを拾い、切っ先を向け、香奈に突進していた。
「石岡さん。辞めなさい!」
シノが安恵に叫ぶも届かず、安恵は怒りの形相で突っ込んでいく。隆矢はピックを飛ばそうとするが、動いているため、標的を定められずにいた。美紅が香奈の覆いかぶさるように抱き、背中を向けて香奈をかばう。

その状況を観た音葉は妙子に向けている竹の棒を取り上げて、突進する安恵に向かった。棒を取られた生徒は突然の事であっけにとられる。
「ハイッ!ハイッ!」
音葉は武の棒で掛け声と供に、安恵が右腕に持っているナイフを落とし、次に安恵の右腹を突いた。音葉の竹棒のさばきに誠良、真岼、美紅、里実以外は驚きの表情を浮かべる。理代はそれを観て微かな笑みを浮かべた。

「お、音・・葉・・。な、何すん・・だよ」
安恵は右腹を押さえながらうずくまり、右腹を突かれ、苦悶の表情で泣きそうな顔を音葉に向け、落ちたナイフを拾おうとする。
「動かないでください!」
音葉は竹棒の先を安恵に向けて制止する。
「ど、どけよ。音葉」
安恵は泣きそうな顔で音葉を睨みつける。
「安恵さん。貴方は香奈さんに負けたんです!それを認めてください」
「だ、誰が・・。あんな・・あんな奴なんかに」
安恵は右腹を押さえながら涙を流す。
「安恵さん。貴方は自分を強いと思ってますが、それは偽りの自分です。花蓮さんや一美さんの影に隠れて、自分が強い気になってるだけです」
「う、うるせい」
「安恵さん。貴方は中学時代いじめに遭ってたようですね。だから必死に勉強してこの学校に入学した。そして貴方は高校ではいじめに遭わないように性格を変えたと言ってましたね?」
「だから何よ?あんたに言った覚えはないわよ!」
「私は貴方が誰かと話してる時に、それを聞いただけです。実際に変わりましたか?都合が悪くなると言う事を聞かない子供みたいに叫ぶところを観ると、私は貴方は弱いままに見えますけどね」
安恵は音葉の言葉に安恵は反論できず無言になる。

「人間の本質はそう簡単に変わるものではないと感じた貴方は花蓮さんや一美さんに取り入った。彼女達と一緒にいれば、誰も貴方をいじめる人間はいなくなる。違いますか?」
「だ、だから何よ。そうよ。だから性格を変えたのよ」
「貴方が香奈さんに負けた原因は自分の弱さを認めず、偽りの強さに酔っていたからです。性格を変えると言う本当の意味をもう一度考え直しなさい!」
音葉の活の聞いた台詞に安恵はすすり泣きをしながらうずくまり、音葉は安恵の下から離れる。里実は落ちていたナイフをハンカチを包んで拾い、小さなビニール袋に入れた。

「さて一美さん。もうこういう馬鹿げた事は辞めにしませんか?舞子さんをそこから解放しなさい!それと真岼さんと美紅さんは香奈さんを保健室に」
「わかったわ」
音葉は一美に舞子の解放を要求した後、真岼と美紅に香奈を保健室に連れ出すように促し、真岼が了解して美紅と供に香奈を連れだそうとするが、周囲を生徒達に取り囲まれる。
「馬鹿か!おまえらをすんなり行かせると思ったか?チクられたらこまるんでな!」
一美は誠良達にそう言いながら、右腕を大きく振り下した。途端に火花のような音と臭いがしてきた。爆竹である。そして爆竹は舞子に向かって無数に投げられた。

舞子の周囲で無数の火花が弾く。
「まりりーん!」
妙子はその光景につっこもうとするが、妙子の方にもいくつかの爆竹が投げられた。
「うわっ危なかとよ!」
寛斗は投げられた爆竹を右手で覆いながら叫ぶ。妙子は爆竹を投げられつつも突進していき、男子、女子に限らず、拳や蹴りを繰り出しながら倒していくが、数が多すぎて舞子の下に近づけなず、やがて抑え込まれる。

やがて舞子の右腕に爆竹が投げられ、それを振り払おうとして柵を離してしまう。そして爆竹以外にも紙で作ったボールや拾ってきたゴミが投げられていた。

舞子に降り注ぐ容赦ない悪意の形。
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~ Comment ~

引き際を見誤ったのでしょうか。この期に及んで爆竹なんて。
保身だらけのクラスメイトなんて、本当に嫌ですね。

舞子が無事であれば良いのですが。

ライトさんへ

こいつらはただ流されているんですが、これは遊び、冗談の範囲だと思ってるんですよ。
舞子が大事に至っても、何か言い訳するような連中です。

花蓮や一美には目的があるんですが、こいつらはただ流されるだけで・・。
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