「Music of Life」
FINAL CHAPTER「親愛の贈曲」
FINAL CHAPTER「親愛の贈曲」1
それは今から約半年前の夏の出来事だった。
誠良、真岼、美紅は筑城大学の音楽室に来ていた。音楽室ではある女性が華麗にピアノを演奏している。長い指先で器用に鍵盤を弾き、ピアノの音が音楽室に響き渡る。
ピアノの演奏が終わると誠良達は拍手を贈った。
ピアノの傍にいた女性講師が演奏していた女性に声をかける。
「音梨さん。いい演奏だったわよ」
「ありがとうございます」
その女性の名前は音梨琴美である。
「では今日のレッスンはここまでにします」
「はい、ありがとうございます」
琴美は頭を下げて女性講師を見送り、誠良達に顔を向けた。
「ごめんね。秋に行われるコンクールで演奏する曲を練習していたの」
「いえ。お構いなく」
誠良は琴美に軽く会釈をする。
「カフェテリアに行きましょう。そこで話すわ」
琴美は誠良達とカフェテリアに移動した。
カフェテリアに着いた誠良達は一番奥の席に座った。真ん中に誠良、左に真岼、右に美紅。向かい側に琴美が座った。
「話には聞いてたけど、まだ子供とはね」
琴美の言葉に誠良達は少しばかり驚いた表情を見せる。
「何故我々がそうだと?」
「スーツ着てるけど、顔見たってまだ幼いじゃない」
誠良の問いに琴美はあっけからんと返す。誠良達は高校生だが、仕事で依頼人と会う際は高校生だと相手の信頼を得られないと判断したため、スーツを着て正装して会う事にしている。普段は多少の変装をするが、琴美は話を聞いているため、あえて変装はしなかった。
「まあ子供であろうが、どうであろうが仕事はきっちりやってくれると思ってるわ。では依頼内容を話します」
琴美は鞄から一枚の写真を取り出した。写真には琴美とある女性が写っている。
「これは先月のコンクールで優勝した時の写真よ。これはその時に撮ったものなの」
「この写真が依頼内容とご関係が?」
「そうよ。さっき君たちが見た人は私の音楽の専任講師だけど、本当はこの人なの。この人の周りにあるトラブルを排除してほしいの」
「トラブルと言うのは具体的にどういったものですか?」
琴美の依頼に誠良が聞き返す。
琴美が続ける。
「私が先生とピアノのレッスン受けている時に、先生の義母や旦那が乗り込んでくる事が何回かあったわ。家事をしないでピアノのレッスンとか言いがかりをつけてきたりね。先生は何も言わなかったけど、先生が非常に悩んでる事がわかったわ。それで一か月前に休職した。私や学校に迷惑をかけたくないだろうけど、私はこの人がいいの」
琴美は沈んだ表情で誠良達に説明をした。
「今貴方に教えている先生も別に悪いとは思いませんが・・」
「そう。悪くないわ。でも事務的よ。音楽大学では講師と教え子は一心同体なの。悪いけど今の先生からはそれを感じられないの!」
「何故そこまでして、その先生の事を?」
琴美の主張に対し、誠良が聞き返した。
「私は10歳くらいまでは両親と歳の離れた兄と暮らしていた。でもある日家族全員事故にあってみんな亡くなったわ。それで施設やあちこちタライ回しにされてぞんざいな扱いを受けてきた。それでも幼少からピアノをやってたし、音楽が生きがいだった。絵に鍵盤を書いたりもした。そういったところで育ったところもあり、すざんでしまった事もあったが、16歳の時に泰伸様が後継人になった時に音楽に打ち込める環境を作ってくれたわ。高卒認定をとって大学も行かせてくれたわ。そこでこの先生に出会ったわ」
琴美がテーブルに置いてある写真に写ってる女性に人差し指を指した。
琴美が更に続ける。
「さっきも言ったように、音楽関係の学部は講師と教え子の一心同体よ。この先生は音楽に厳しい面もあったけど、その反面私によくしてくれたわ。私が泰伸様のところに行くまではいい環境で育ってなかったから、この先生は私にとって心の安らぐ存在なのよ。一緒に御飯食べたり、色んな話もしたりしてね。私の家にまで来てレッスンをしてくれたりもした。だから大学にいる間はずっとこの先生でいたいのよ。先生にこういった問題が起きてるなら、私がなんとかしたいと思ってるの。それがこの人に対しての恩返しだと思うの」
琴美の主張にどこか個人的な都合を感じながらも、誠良達は琴美の思いには理解を示していた。
琴美の思いを聞く誠良達。
よろしければポチッと

にほんブログ村
誠良、真岼、美紅は筑城大学の音楽室に来ていた。音楽室ではある女性が華麗にピアノを演奏している。長い指先で器用に鍵盤を弾き、ピアノの音が音楽室に響き渡る。
ピアノの演奏が終わると誠良達は拍手を贈った。
ピアノの傍にいた女性講師が演奏していた女性に声をかける。
「音梨さん。いい演奏だったわよ」
「ありがとうございます」
その女性の名前は音梨琴美である。
「では今日のレッスンはここまでにします」
「はい、ありがとうございます」
琴美は頭を下げて女性講師を見送り、誠良達に顔を向けた。
「ごめんね。秋に行われるコンクールで演奏する曲を練習していたの」
「いえ。お構いなく」
誠良は琴美に軽く会釈をする。
「カフェテリアに行きましょう。そこで話すわ」
琴美は誠良達とカフェテリアに移動した。
カフェテリアに着いた誠良達は一番奥の席に座った。真ん中に誠良、左に真岼、右に美紅。向かい側に琴美が座った。
「話には聞いてたけど、まだ子供とはね」
琴美の言葉に誠良達は少しばかり驚いた表情を見せる。
「何故我々がそうだと?」
「スーツ着てるけど、顔見たってまだ幼いじゃない」
誠良の問いに琴美はあっけからんと返す。誠良達は高校生だが、仕事で依頼人と会う際は高校生だと相手の信頼を得られないと判断したため、スーツを着て正装して会う事にしている。普段は多少の変装をするが、琴美は話を聞いているため、あえて変装はしなかった。
「まあ子供であろうが、どうであろうが仕事はきっちりやってくれると思ってるわ。では依頼内容を話します」
琴美は鞄から一枚の写真を取り出した。写真には琴美とある女性が写っている。
「これは先月のコンクールで優勝した時の写真よ。これはその時に撮ったものなの」
「この写真が依頼内容とご関係が?」
「そうよ。さっき君たちが見た人は私の音楽の専任講師だけど、本当はこの人なの。この人の周りにあるトラブルを排除してほしいの」
「トラブルと言うのは具体的にどういったものですか?」
琴美の依頼に誠良が聞き返す。
琴美が続ける。
「私が先生とピアノのレッスン受けている時に、先生の義母や旦那が乗り込んでくる事が何回かあったわ。家事をしないでピアノのレッスンとか言いがかりをつけてきたりね。先生は何も言わなかったけど、先生が非常に悩んでる事がわかったわ。それで一か月前に休職した。私や学校に迷惑をかけたくないだろうけど、私はこの人がいいの」
琴美は沈んだ表情で誠良達に説明をした。
「今貴方に教えている先生も別に悪いとは思いませんが・・」
「そう。悪くないわ。でも事務的よ。音楽大学では講師と教え子は一心同体なの。悪いけど今の先生からはそれを感じられないの!」
「何故そこまでして、その先生の事を?」
琴美の主張に対し、誠良が聞き返した。
「私は10歳くらいまでは両親と歳の離れた兄と暮らしていた。でもある日家族全員事故にあってみんな亡くなったわ。それで施設やあちこちタライ回しにされてぞんざいな扱いを受けてきた。それでも幼少からピアノをやってたし、音楽が生きがいだった。絵に鍵盤を書いたりもした。そういったところで育ったところもあり、すざんでしまった事もあったが、16歳の時に泰伸様が後継人になった時に音楽に打ち込める環境を作ってくれたわ。高卒認定をとって大学も行かせてくれたわ。そこでこの先生に出会ったわ」
琴美がテーブルに置いてある写真に写ってる女性に人差し指を指した。
琴美が更に続ける。
「さっきも言ったように、音楽関係の学部は講師と教え子の一心同体よ。この先生は音楽に厳しい面もあったけど、その反面私によくしてくれたわ。私が泰伸様のところに行くまではいい環境で育ってなかったから、この先生は私にとって心の安らぐ存在なのよ。一緒に御飯食べたり、色んな話もしたりしてね。私の家にまで来てレッスンをしてくれたりもした。だから大学にいる間はずっとこの先生でいたいのよ。先生にこういった問題が起きてるなら、私がなんとかしたいと思ってるの。それがこの人に対しての恩返しだと思うの」
琴美の主張にどこか個人的な都合を感じながらも、誠良達は琴美の思いには理解を示していた。
琴美の思いを聞く誠良達。
よろしければポチッと

にほんブログ村
スポンサーサイト
総もくじ
サッカー

総もくじ
Music of Life

総もくじ
短編、SS、読み切り

- ┣ 京に咲く二つの華
- ┣ 彼と彼女
- ┣ イラストSSシリーズ
- ┣ 目覚める龍(覚醒的龍)
- ┣ 蒼き侍たち
- ┣ 愛欲の時間(とき)
- ┣ 真性の語らい
- ┣ あいのかたちあるもの
- ┗ セッティング工作交渉
もくじ
はじめまして

総もくじ
サッカー

総もくじ
Music of Life

総もくじ
短編、SS、読み切り

- ┣ 京に咲く二つの華
- ┣ 彼と彼女
- ┣ イラストSSシリーズ
- ┣ 目覚める龍(覚醒的龍)
- ┣ 蒼き侍たち
- ┣ 愛欲の時間(とき)
- ┣ 真性の語らい
- ┣ あいのかたちあるもの
- ┗ セッティング工作交渉
~ Trackback ~
卜ラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~