「Music of Life」
FINAL CHAPTER「親愛の贈曲」

FINAL CHAPTER「親愛の贈曲」42

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ヤンキーチックな格好をしている少女、仁羅京香(にら きょうか)は木々が茂る森の中で待ち続けていた。

「わざわざ京都から来てもらって悪いわね」
京香が声のする方向へ振り向くと、“依頼人”が立っていた。
「うわあ、もうびっくりするんやんか」
京香は“依頼人”の出現に驚いた表情を見せる。“依頼人”は気配を消して、京香に近づいたのだ。

「悪いわね。習性だから」
“依頼人”は声にエフェクトをかけている。“依頼人”の自分の正体を悟らせないためだ。京香自身も“依頼人”の正体を知らないのである。

「いつもやったら直接会わず、コンタクターのおばはんから通信で連絡が来る筈やけどな」
「マネージャーとコンタクターは今は手が離せないわ。だから私が直接来たの。それに通信を使えば奴らに知られる可能性がある」
「だからこんな殺風景な森の中にしたと言う訳やな」
京香は感心した表情で周囲を見回す。

「時間がないから単刀直入に話すわ。ある人間に“休暇”を付与してほしい」
「夢ヶ丘高校絡みか?」
「そうよ」
「確か女子生徒が屋上から転落したとかニュースになっとるけど、ほんまはいじめでそないな事になったと裏ネットではそうなってるわ。やった奴らの顔写真とか出とるし、最終的にはクラス全員が関わったとも記載されてあったわ。担任の先生も一枚噛んでるみたいやな。だがその情報も消されかかってて、今は観れへんようになってるわ」
「閲覧できないように既に工作はしてある。今回ここまで大ごとにしまったのは私の責任よ。贖罪ではないけど、中途半端に人間の暗部を出した人間には、真の闇を与えないとね」
「誰に“休暇”を与えるかわからんけど、クラス全員とか言うんとちゃうやろな」
「いいえ。この人物よ。タブレットに既に送ってあるわ」
“依頼人”の言葉に、京香はタブレットを取り出して、画像をタップした。

京香はタブレットの画像を見て、口を開く。
「女子高生とその母親か。女子高生は樹里が喜びそうやな」
「標的は事件になった直後に悲壮感から学校を出て行ったわ。母親に連絡が行き、母親が説得して、一緒に警察署に行ったわ」
「警察に行ったんやったら、“休暇”を付与する必要ないんとちゃうか?」
京香は“依頼人”からの標的の情報を聞き、首を傾げる。

“依頼人”は更に続ける。
「この標的は警察署で事情聴取を受けるものの、転落事故の原因には積極的ではなかったと判断され、自宅に帰されたわ。実際そうだったからね。でも彼女を虐げたのは事実で、暴力はあまり使わなかったものの、ハラスメント絡みは多かったわ。言葉等の暴力では傷害罪の立件が難しいため、不起訴に終わる可能性が多い。勿論ネット等で写真とかは出るでしょうが、一時期的なものに終わるでしょうね」
「本人がどない思ってるかわからんけど、世間的には責任逃れと思われてもしゃあないって事やな。ええで。うちらがやっとくわ。で、どないな方法にすんねん?」
「二人とも遺体を献体に出して、行方不明と言う事にしてほしい。その後、住居も引き払い、荷物等も処分してほしいわ」
「なんか今回やる事多いなあ」
“依頼人”の数々の要求に、京香は苦い顔を浮かべる。

「今回は私達のサポートはないと思った方がいいわ」
「ちょー待てや。あんたらのサポートがなかったら、“仕事”がやりにくくなるわ」
「京香さん。私はこの社会に弾かれ、不適合者となった人々を使って、日常に潜む悪意を行う者達を抹殺してきたわ。貴方も知っての通り、一般的に精神に異常をきたしてる人間達ばかりだわ」
「確かにそやな。あたしも社会から疎外された人間や」
京香は“依頼人”の言葉に皮肉を込めて返す。

「貴方はその中でも殺し以外にも多方面で仕事をこなしてるわ」
「そりゃあんたらのおかげや。あんたらがおらんかったら捕まっとるか?殺されてるか?や」
「私達がいなくても貴方は十分にやっていけると思う。表の世界でも・・」
「今更表に出て、普通の暮らしがしたいなんて思わんで」
京香は“依頼人”の評価に否定して返す。

「私達は今大きな戦いをしようとしている。生き残れない可能性もある」
「あんたらおらんようになったら、あたしらどないしたらええねん。あたしにはあんたやおっさんやおばはんのようにはできひんで」
「別に私達のようにやる必要はないわ。貴方には貴方のやり方で仕事をやり遂げばいいだけ」
「あたしはともかくとしてな。他の人間はどないすんねん。樹里とか歯止めが効かんようになるで」
京香は納得せず反論を続ける。

「そうなる可能性は否めないわね。でも万が一私達に何かあっても、貴方達の事までは繋がりがないよう、常に細工してあるわ」
「それは知っとるわ。なんかでかい事やってるんやったら、あたしもそれに参加させてえや」
「人にはそれぞれ役割があるわ。私達は組織や団体と言う訳ではない。ただのネットワークよ。一人一人が独立してるわ。私やマネージャー、コンタクターはただやり方を導いてるだけに過ぎない。京香さんは個人としてやりやすいようにすればいいだけよ」
「そこまで言うならわかったわ。あんたの依頼、承諾するで。“依頼人”」
京香は”依頼人”の気持ちをくみ取り納得した。


「BLACK PARKA-ブラックパーカー-」の
仁羅京香が登場。


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